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「震災があったから」そんな思いを子どもたちに抱かせたくない
〜益城町立木山中学校・永瀨善久校長のお話〜

2016.12.16

カタリバが自習支援を行っている益城町立木山中学校の永瀨善久校長に、地震発生当時から現在の子どもたちの様子についてお話を伺いました。

▲永瀨善久校長

▲永瀨善久校長

2016年4月14日の余震と16日の本震によって、益城町は大きなダメージを受けました。私が勤務する益城町立木山中学校も2度にわたる震度7の地震により、渡り廊下は倒壊寸前に。2階の図書室から漏水した影響で階下の職員室が水浸しとなり、生徒の個人情報が入るPCもやられてしまいました。

授業が再開したのは5月9日。地震発生から実に25日ぶりのことでした。木山中学校は校舎が使えなかったため、隣にある益城中央小学校の教室を借りて授業を行うことになりました。

幸い、生徒と先生に死者・けが人はありませんでした。登校してきた子どもたちも友達との再会を喜び合っていたようでした。しかし、その中で、お父さんとおばあちゃんを同時に失った生徒が一人いました。

■不自由な避難所生活を送る中、始まった「学習会」

本震直後は全校生徒271名のうち97%が避難。学校が再開した5月も、まだ6割の生徒が避難所生活を送っていました。

避難所では一人一畳ほどのスペースしかなく、学校で授業を受けても勉強するスペースはありません。しかも消灯時間は21時半。子どもたちが自由にできる時間も場所もほとんどない状態でした。そんな時、教育委員会を通して「カタリバの学習会」ができると耳にしました。ぜひやってもらいたいとお願いし、当初は90名の生徒が参加していました。学習会では、カタリバのスタッフやボランティアが学習の場を提供しつつ、子どもたちに寄り添っていました。職員よりも近い立場で子どもたちに安心感を与えてくれ、職員にはなかなか話せないようなことも話していたようです。

■「震災があったから」と子どもたちに言ってほしくない

地震によって影響を受けたのは、他にもあります。毎年、キャリア教育の一環として行ってきた「職場体験」もその一つです。多くの職場が被害を受け、これまでご協力いただいていた職場自体がなくなったところもありました。そのため、実施するか否かとても悩みましたが、カタリバのスタッフが熊本市内までエリアを広げて職場開拓をしてくれることに。連日、職場訪問を行ってくれたおかげで、テレビ局や新聞社などこれまでに体験したことのない職場も協力してくれることになり、無事に開催できることになりました。

「震災があったから、自分たちの学年は職場体験がなかったんだ」。

子どもたちにそんな思いを持ってほしくなかったので、本当に嬉しかったですね。

職業体験は自分自身を振り返る場であり、職場で実際に働く方と話すことで社会や自分を知る機会でもあります。子どもたちはカタリバのおかげで、ちょっと先のことから大学・就職など、夢を育むことができていたのではないでしょうか。

■学校行事支援で生まれた「新しい流れ」

職業体験以外にも、学校行事の支援もしてもらっています。

たとえば、9月に行った4カ月遅れの体育大会。組み体操は怪我の恐れがあることから、その危険性を訴える声が高まっています。しかし、安全に行う方法もあるのではないかと相談すると、体育担当と体育大学の学生が話し合い、安全に行える組み体操を作り上げることができました。
また、10月の活動発表会では、合唱コンクールの練習がなかなか上手にできずにいたところ、音楽大学の学生にコンタクトを取ってくれ、所属する合唱団の方の協力を得たことも。

学校行事へのカタリバによる支援は、職員の意識に変化も起こしています。プロの指導で生徒のレベルがアップしたことを目の当たりにし、厳しくするよりもコツをつかんで楽しみながら行う姿勢は、我々にとって大きな学びになっています。

また、直接学生に連絡を取り、彼らの専門に合わせて参加してもらうという、これまでにない流れができたのもカタリバに支援をお願いしたからこそ。

こういう取り組みを広めてもらったおかげで、今後職員の技術の向上、子どもたちとの関係づくりがうまく進むのではないかと期待を寄せています。

■これからが本当に大切な時期。カタリバと学校で連携して見守ることが必要

一方、町の復興は遅々として進んでいません。益城町は熊本県内でも一番被害が大きい地域です。全壊・半壊の家の解体・撤去作業が全て完了するまでには2年かかるとも言われています。さらに、元どおりに立て直すには5年。日常を取り戻すにはまだまだたくさんの時間を必要としています。

神戸や東北でも震災から3年目に、子どもたちが「荒れた」という事例を耳にします。
この時期は、保護者が生活再建のためになかなか子どもたちに意識が向きにくくなる時期と重なります。そうした時に、子どもたちの学習意欲をかきたてたり、話し相手になってくれたり、長期的に支援をしてもらえたらと思っています。
実際、悩みを持っている子どもたちは日に日に増えています。
最近でもフラッシュバックが起きて、精神的に不安になった子がいました。
これからが本当に大切な時期です。カタリバと学校が連携して見守っていくことが必要だと感じています。

▲「ましき夢創塾」のスタッフ・井下友梨花と一緒に

▲「ましき夢創塾」のスタッフ・井下友梨花と一緒に

【テレビ放送のお知らせ】
Eテレ12月17日(土) 午前0:00-1:00(金曜深夜)再放送!
ETV特集 15歳 私たちが見つけたもの~熊本地震 3年3組の半年~
カタリバが支援活動を行う益城町立木山中学校の生徒の姿を半年にわたって見つめた番組が放映されます!
ぜひご覧ください。

【説明会実施中!】教育課題にとことん向き合う1年間 『実践型教育インターン』

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