最新のお知らせ

震災の時、小学校に入学した子たちが高校生に。

2022.3.23

こんにちは。女川向学館です。

暖かく春に近づいてきたと思ったら、雪。いつも春の変わり目は雪が降ったり、冷え込んだりするそうです。

3月20日の日曜日。

「新型コロナウイルスの影響でしばらく中止になっていた女川のお祭りが、久しぶりに開催される!」

女川向学館のスタッフは、この日を指折り数えて楽しみにしていました。それは女川向学館の卒業生と一緒に、屋台を出店する予定だったからです。

卒業生の彼らは現在高校2年生。卒業しても土曜日に来て、勉強したり、仲間とスタッフとしゃべったり、ボードゲームをして遊んだり、女川向学館を心地よい「居場所」として利用してくれています。

いつものように、土曜日に女川向学館に集まっている高校生たちに、

「今度、『女川春のまつり』が開催されるから、みんなで出店しよう!」

と拠点長の芳岡が話を持ちかけると、「やるの〜?」という曖昧な返事だったけれど、すぐに「どうすれば売上上げられるかな?」「打ち上げで焼肉食べに行こう!」と盛り上がる高校生たち。

屋台では女川の名産・牡蠣を使って『牡蠣焼き』を出すことになりました。

「なんとなく、お祭りで牡蠣を焼いて出している屋台を見たことはあるけれど、どうしたらいいのだろう?」

そう話している時に、女川向学館の卒業生が、自ら経営しているお店で牡蠣を焼いてお客さんに提供していることが話題に上がり、その卒業生のところに牡蠣の焼き方を聞きに行くことにしました。

「焼き牡蠣って、どうやって調理しているんですか?」と高校生が聞くと、お店で出している調理方法をためらいもなく教えてくれる卒業生。ちょっと年上のお兄さんが、高校生に教えてくれる様子は、これまでカタリバで大事にしてきた『ナナメの関係』が女川でも生まれていることを感じました。


こうして料理方法を聞いたり、備品を買ったり、看板を作ったり、当日に向けて準備を進めていた矢先、島県沖を震源とする最大震度6強の地震の影響を受け、お祭りが中止になってしまいました。お祭り開催の三日前のことでした。

揺れが大きく、物が落ちて散乱してしまった家やお店が多かった今回の地震。

女川向学館でも館内の片付けが必要なほど本や備品が散乱していました。

スタッフが地震の片付けをしていると、「大丈夫だった〜?」と牡蠣焼きを一緒にやる予定だった高校生の一人が来てくれました。そして、仲間を呼んで、一緒に館内の片付けをしてくれたのです。

そして、女川向学館の片付けが終わると、「あそこも大変そうだから、手伝いに行ってくるね!」と、いつも仲間で食べに行っている中華屋さんに行って、落ちて割れたコップやお皿の片付けに。

「みんなが手伝ってくれて助かった〜。ありがとうね」とお店の人に感謝される高校生たちの姿を見て、女川向学館スタッフは感慨深く感じました。

高校2年生の彼らは、小学校入学を目前に東日本大震災が起こりました。

震災の影響で、「普通の学校生活」のみならず、さまざまな影響を受けた学年でした。

そんな彼らが大きくなって、女川で困っている人を手伝いに行くという行動ができる大人になっている。そんな成長を感じられたのは、これまで10年間女川で活動してきた大きな喜びであるかもしれません。

彼らを見ていると、成人になっても、女川を一度離れたとしても、ずっと一緒に時間を過ごした仲間ときっとまた女川で集まって、「小学生のあの時、あんなことしたよね」「中学生の時のあれ覚えてる?」と、女川でともに過ごしてきた時間を共有したのしんでいる様子が思い浮かびます。

これからも、女川向学館を居場所にしてほしいなと思います。