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被災地・熊本の中学校で「カタリ場」開催!~中学3年生のキャリア教育支援

2017.10.30

▲「カタリ場」で大学生ボランティアと語り合う中学生

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こんにちは。熊本県益城町から井下友梨花がレポートします。

被災地の放課後学校コラボ・スクールましき夢創塾では、中学生向けの夜間学習会の他に、町内の中学校にて学校行事支援も行っています。今回は中学3年生を対象としたキャリア教育授業の報告です。

2017年6月には様々な職業の方からお話を伺う「職業講話」の授業を、9月には熊本だけでなく九州各地から集まった大学生と本音で対話する「カタリ場」を実施しました。

普段接することのない大人や大学生と出会うことで、子どもたちはどんな思いを持ったのでしょうか?以下、レポートをご覧ください。

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6月29日、益城中学校の3年生各教室(6クラス)にて、「職業講話」の授業を行いました。例年は、体育館にて講演形式の職業講話でしたが、今年度はカタリバがお手伝いさせていただくということで、学年主任の先生にご協力いただきながら、今年の生徒にとっていい形を一緒に模索して準備を進めていきました。保育園の先生、農家、ホテル支配人、作業療法士、役場職員、NPO職員という職に現在就かれている方々にご協力いただきました。

▲中学3年生の1学期。ほとんどの生徒にとって初めての進路選択。将来についての漠然としたイメージしか抱けていない生徒が多い中で、「職業についての知識を得ること」よりも、「多様な大人の生き方との出会い」を得る機会にできたらと、益城町を中心に6名の大人にご協力いただきました。生徒はその6名の経歴や話のあらすじを事前に読んだ上で、興味のある3名のお話を選んで聞けるという授業形式で実施しました。写真はホテルエミナース総支配人の橋之口茂さん。

 

▲益城町出身の農家・永田忠幸さん。人を喜ばせまくる人生についての話。テクノ仮設団地での夜間学習や、カタリバ主催の合宿など、よくボランティアで参加をしてくれています。

▲熊本地震後、熊本県庁より出向で益城にいらしている益城町役場の戸上雄太郎さん。若者が益城町の未来について語り合い、アクションする「益城町未来トーーク」という動きを作り出している方でもあります。

生徒からは

「職業講話を聞いて、自分の進路がちょっと明るくなった気がしました。私は今の時点で行きたい高校も特に決まっていないし、将来の夢も決まっていません。だから将来のことを考えるといつも不安になっていました。だけど、講師の方の話を聞いて、不安が少なくなりました。中学時代に夢が決まってなくても、楽しく生きられるという話だったからです。そのためにメッセージであった『自分で決める』ということを大事にしていこうと思いました」

「何で勉強をするのか、という話が印象に残りました。これまでは今やっている勉強は絶対将来使わないと思っていたけれど、今している勉強を使う使わないではなく、『将来の選択肢を広げるために勉強している』ということを教えてくれました。とても納得しました」

「失敗をして辞めるのではなくて、そこから何を学ぶかが大事だということを学びました」

などの感想がありました。

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9月14日、同じ3年生を対象に、「カタリ場」の授業を行いました。職業講話は基本的には「聞く」ことがほとんどでしたが、次は生徒が自分のことや将来について「語る」番です。福岡カタリバを運営する、一般社団法人ピープラスさんにご協力をいただき、「カタリ場」の授業を企画・実施を行いました。

▲福岡を中心に、熊本・大分・東京から約60名の大学生が、ボランティアスタッフとして益城中学校に集まりました。この日のために事前研修で企画目的の理解やコミュニケーションの練習を重ねました。

▲企画の大学生リーダーは北九州大学2年生の山口笑璃さん(写真右)。自身も熊本県出身ということで、企画リーダーに名乗りを上げてくれました。

▲約230名の生徒と大学生60名が、益城中学校の体育館に集まりました。

▲賑やかな音楽が鳴り響く中、初めて会った大学生と班をつくり、授業がスタートしました。

▲座談会の時間。生徒が好きなことや気になることなどから、大学生と語り合います。

▲先輩の話。今回は6名の大学生から2名の話を生徒が自分で選ぶことができました。大学生はそれぞれの人生から益城中学校の3年生に伝えたいメッセージを語ります。過去のつらい経験を赤裸々に話す先輩の話に、真剣に耳を傾ける生徒の姿がありました。

▲熊本出身で、熊本の高校からアメリカの大学に進学した先輩。「中学時代、具体的な夢はなかった。受験では、やりたい部活ができて家から近いという単純な理由で高校を選んだ。そんな高校で見つけた小さな興味。その興味を突き詰めて見えた自分の将来」というあらすじのお話。

▲先輩の話を聞き、座談会の時間で大学生と語り、という流れの中で、少しずつ本音を語りだす中学生。授業の最後には、班の大学生と中学生で、明日からできる一歩を約束しました。短い2時間の「カタリ場」の授業が終わり、退場する頃には、名残惜しそうに最後まで体育館に残る生徒の姿が多く見られました。

生徒からは

「進路のことをすごく悩んでいたけど、そんなに悩まなくても、やりたいことを少しずつしていたら何か見つかるのかなと思いました」

「班の先輩には、正直な気持ちでたくさん話すことができてよかった。進路などで悩んだときには、お話を聴いた先輩の言葉を思い出したいと思った」

「班の先輩と共感出来て、今の自分が今のまんまでいいんだって思えたことが本当に嬉しかったです。自信がもてた気がするし、頑張ろうって思いました!」

という感想がありました。

子どもたちが、震災を理由に将来の夢をあきらめたり、描けなくなってしまわないようこれからも寄り添い、伴走していきます。熊本の子どもたちへのご声援よろしくお願いいたします。