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【被災地の教育現場 vol.18】 すべては五七五の中にⅠ

2015.12.07


震災の年の5月に、女川の中学生に俳句を作らせようという企画があった。

被災地の学校には、様々なプロジェクトや取材が殺到した。
とても対応しきれず、ほとんど断っていたのだが、これはやることになった。「震災と向き合う機会になる」というのが理由である。…で、国語担当でお願いしますと。

ちょっと待ってくださいと、私は言った。

8割の建物が流され、10人に1人が犠牲になっている町の生徒に「素直な気持ちを五七五に」なんてことをやらせていいのだろうか。震災のことが題材になるのは目に見えている。何を見ても、どこにいても3.11の記憶がついてくるはずだ。

授業の直前、いや授業が始まっても、迷いは消えなかった。

私は半ば開き直って言った。「何を書いてもいいよ」「書かなくてもいいぞ」
あの時の私は、生徒がどんな言葉を選ぶのか怖かったんだなと、最近思う。

一通り手順を説明して「はい、始め」と指示した直後の光景を私は一生忘れないだろう。生徒たちは、すぐに指折り数えて言葉を探し始めた。もう鉛筆を動かしていた生徒もいた。まるでこんな活動を待っていたように…。

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いったいどんなことを書いているんだろうと机を覗くと、こんな句が次々と目に飛び込んできた。どのクラスも同様だった。

 故郷を 奪わないでと 手を伸ばす / ただいまと 聞きたい声が 聞こえない

 今はなき おばと歩いた 浜の道 / 海水に ついたすずらん 咲いていた

 ガンバレと ささやく町の 風の声 / うらんでも うらみきれない 青い海

 中学校 制服なしの 初登校 / 震災に いつもの幸せ 教えられ

震災からまだ二ヶ月、町の至る所に、流された家、自動車、列車や船までが横たわっている。その光景を前に「津波に負けずに頑張ろう」などという言葉は簡単には言えない。原稿用紙を何十枚費やしても表すことはできないだろう。

生徒は、五七五という限られた条件のもとで、必死に言葉を探していたのだ。

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言葉を探すということは、現実と向き合うことであり、自分の心と向き合うことだ。現実が厳しければ厳しいほどその作業はごまかしが効かない。書かなくてもいいぞと言ったのに、全員が提出した。

あの時、指折り数えて探した五七五は今も女川中学校の玄関に掲示されている。

≪つづく≫

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このブログ「被災地の教育現場」シリーズは、
元 女川中学校教員である佐藤敏郎先生が、教育現場を見てきた先生として、
コラボ・スクール女川向学館のメンバーとして、被災地の教育現場の現状を
つづる連載です。
学校現場の視点、保護者の視点、地域の視点でコラボスクールの価値と
可能性についてつぶやきます。

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