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【元女川中学校教員・佐藤敏郎先生より】「熊本で考えたこと」

2016.5.26

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始業式からの一週間はよく、「学級経営黄金の一週間」と言われる。新しい出会いの中で、掲示物を作ったり、係を決めたりしながら、どんどん学級の土台ができていく。

今度の大地震は新学期に起きた。

学年末だった東日本大震災と大きく違う点だ。進級、入学し、胸弾ませて始まったであろうその数日目の震度7。しかも連続で。担任の先生の気持ちを思うと、胸が詰まる。あれこれと思い描いていた学級づくり…。大地震は、その構想も崩壊させた。

5月に入っても余震がずっと続いていたが、熊本県内のほとんどの学校が今月10日までに再開した。地震から1ヶ月経っていない早さだった。


熊本の知り合いの方から「たいへんな状態です。5年前はどうだったんですか?」と尋ねられ、「話を聞きたい」「来れないか?」と話が進み、急きょ5月5日〜8日の日程で九州へ飛ぶことにした。何もできないけれど、悩んだり、気づいたりした体験談は話せる。もちろん、5年前とは違う事情もたくさんあるので、一緒に考えたいと思った。

ただし、どこの学校も再開準備で多忙を極めているはずで、その邪魔になることは避けたかったので、少人数での座談会を企画していただいた。出発する数日前のことだ。

ところが予想に反し、どの会場も100人前後が集まり、ジャンボ座談会となった。

学校を再開する意義はたしかにある。子どもたちは友達や先生に会いたがっているし、授業の遅れも無視できない。それに、5年前、学校から聞こえてくる子どもたちの声が、壊滅状態の海辺の町を、どれだけ元気づけたかは計り知れない。

とは言え、時間割や学校行事の見直し、校舎や通学路の安全対策、学校によっては避難所の対応もしなければならない。地震前は予想していなかった業務が山積みである。

そして、余震が続く中で、子どもの命と心をどう守るのか。熊本の先生方が一番考えておられることだろう。グループディスカッションで、質疑応答で、終了後の会場で、「子どもにどんな言葉をかければいいか」「不安をどう解消すればいいか」という声が多く聞かれた。


5年前、私も悩んだし、試行錯誤は今も続けている。うまくいかないことも多かったし、やり直したこともたくさんあった。初めての体験なわけだから、最善を尽くすしかない。私の経験上、子どもたちなりに現実を受けとめるものだし、大人の気持ちも理解している。何より、子どもに対して一生懸命な大人の姿勢は必ず伝わると思う。

手当は早いほうがいい、でもそれは状況とマッチしたものでなければならない。学校で何が起きているのか、どういうことが求められ、それに対してどんな支援が可能なのかを見極めなくてはならない。座談会と平行して、カタリバのスタッフは数日間、熊本市、益城町など各地をかけずり回って教育委員会、学校の話を聞いた。


東日本大震災が起きた当時、私は女川の中学校の教員だったが、あのときもカタリバは、学校や地域と対話を重ねながら活動してくれた。カタリバが来てくれなかったらと思うとゾッとする。

避難所のまま再開する学校、校舎が使えなくなって学校を受け入れるため、午前午後で生徒を入れ替える学校、ある学校では水道が復旧していなかったので、先生方がトイレの水汲みを延々とやっていた。


体験したことのない様々な状況の中、子どもたちは通学してくる。

急きょ、7日の午後に「学校再開の話をしよう」と銘打ち、熊本市内で学生による作戦会議を行うことにした。告知は24時間前、フェイスブックのみだったにもかかわらず、故郷の緊急事態に突き動かされた若者が20人以上集まり、想いを語り合った。

12日には第2回が行われ、倍の人数が集まった。方向性が決まり、動き出しているとのこと。彼らの情熱と機動力に期待大である。


みんなが九州には行けない。テレビや新聞の小さな窓を見ながら、私たちは遠くで想いを馳せる。

「おはよう!」ランドセルを背負った子ども達の元気な声。

再開した学校を支えている関係者の画面に映らない奮闘ぶりを思う。

泣いていないから大丈夫とは限らない。涙すら出ないのかもしれない。笑わないとやってられないのかもしれない。涙も微笑みも同じ場所からあふれるもので、どっちも大事。町の至る所でくまもんがそう言っているような気がした。

それから、「ばい」という終助詞。なんだか力が湧いてくる。

がんばるばい!

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