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【ボランティア体験記】5年半が経った今こそ、必要なボランティアの力。

2016.9.16

9月も中旬になり、大槌町には秋の訪れを知らせるやわらかな風が吹き始めました。

大槌臨学舎でも夏休みを利用してボランティア活動に参加してくれた学生さんに入れ替わり、新しく4名のボランティアが活躍しています。

そのうちの一人である山下かおりさんは、高校卒業と同時に海外生活を数年間経験。その後、一念発起して大学受験に挑戦し、この春から大学1年生となりました。現在は長期休暇を利用して、臨学舎で1ヶ月間のボランティア活動に参加しています。

今回は、山下さんにお話を伺いました。

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山下かおり(やました・かおり)
神奈川県出身。現在、大阪大学人間科学部 1年。
ボランティア参加期間:8月22日〜9月23日
 
 
ーー 臨学舎のボランティアに参加する前は、どんな生活を送っていましたか?

 5歳の時にクラシックバレエを始めて以来、ずっとバレエ漬けの毎日を送ってきました。高校卒業後はスイスにバレエ留学し、ニューヨークのバレエ団にも入団しましたが一昨年帰国。帰国を機に自分の過去を振り返った時、これまでバレエに夢中になるあまり、あらゆることを犠牲にしてきてしまったのではないかと感じるようになりました。他にもいろいろな可能性があることに気づいたことから、もっと多くのことに挑戦したいと思いきってバレエをやめる決断をしました。
 それから1年間は受験勉強に専念。この春、大学に入学しました。現在は勉学だけでなく、こうして学外の活動にも挑戦しています。
 
 
ーー 6年目の被災地、東北ボランティアに参加しようと思った理由は何ですか?

 海外で過ごしていた間も、ずっと東北を訪れたいという気持ちがありました。留学を終えた頃は震災から5年が過ぎていましたが、「もういいか」という気持ちにはなれませんでした。これまで報道や誰かから被災地のことを見聞きすることはありましたが、何が本当の姿か分からないし、「分かった気になってはいけないな」とも思っていました。
 何より、時間が経って人々の気持ちが離れやすい今だからこそ、ボランティアは必要なのかもしれないと思いました。
 
 
ーー 被災地に来る前と来た後で感じたギャップはありましたか?
 
 実際に来て感じたことは、「分からないことは、分からない」ということです。私は震災の当事者ではないですし、その事実はここを何度訪れても変わるわけではありません。「現状をちゃんと理解したい」と思って来たものの、外から来た人にはすべて理解することができない複雑な事情や感情があふれているのだな、ということを実感しました。
 自分がいつまでも「よそ者」であることをしっかり自覚した上で、分かった気にならず、そんな自分に何ができるのか、改めて考えるようになりました。
 
 
ーー 臨学舎でボランティアをしてみて、どんなことを感じましたか?

 臨学舎は、塾でも学校でもない「特別な空間」だと感じました。
ここには、いわゆる都会の塾とは違って、いい意味で「どこにでもいる、普通の子どもたち」が集まってきています。そんな彼ら・彼女らの日常に関われることで、教員志望でない私にとっても毎日いろいろな発見や気づきがあります。
 
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ーー 教員を目指していなくても、学べることはありましたか?
 
 たくさんあります。ここには頑張っている子だけでなく、自信が持てない子や中途半端な子、頑張ることができない子もいます。そんな子どもたちに関わる中で、「あなたになら絶対にできる!」という言葉の威力に気付かされました。どんなに自信のない子でも、そう声をかけると少し顔色が変わるんです。

 でも、誰に対しても「できるよ!」とただ声をかければ良いわけではありません。時には本気で向かわなくちゃいけないことも。こっちが適当な言葉を使えば子どもはすぐに見抜くので、自信を持って言い切れないのなら言わない方がいい。人によって響くものが違うので、そこを見極めるのがすごく難しいと感じました。「人に本気で向き合う」には、それ相応の覚悟が必要なんだと知りました。
 また、私たちが当たり前だと思っていることにも、子どもたちは疑問を抱きます。「なんで勉強しなくちゃいけないの?」「なんで汚い言葉を使っちゃいけないの?」そういったまっすぐな質問から逃げてはいけないと思うようになりました。「なんでだろう」と真剣に考え、どうしたら伝わるだろうと常に悩みながら接しています。
 コラボ・スクールでの日々は普段なんとなく生活していては気づけないような発見や、つい鵜呑みにしてしまっている事に改めて向き合うことができる、良い機会になっています。
 
 
ーー 職場やスタッフの雰囲気はどうでしたか?
 
 一人ひとりの「学び」を大切にしていて、ここにいる全員で成長しようとしていると感じました。
通ってくる子どもたちの成長はもちろん、自分自身の成長、スタッフ同士の成長も大切にしているのが伝わってきます。みんなで協力し合って、「より良いものをつくっていこう」という雰囲気の中で、毎日たくさんのことを学びながら過ごしています。
 
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震災から5年半が経過した今だからこそ、東北では人の力を必要としています。
 
ここには、「被災地」「復興」だけでなく、「人に向き合うこと」「地方の課題」「教育の楽しさ・難しさ」など、向き合うべき多様なテーマがいくつも存在しています。それと同じく、もしくはそれ以上に、子どもたちと直接関わることで感じることができる、たくさんの学びや歓びもあります。
 
現在、コラボ・スクールでは10月から一緒に活動してくれるボランティアを募集しています。みなさまの参加をお待ちしております!
 
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