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大槌祭り2016〜「原点」に帰る人々の思い〜

2016.9.29

大槌町が一年で一番熱くなる日。

それが、大槌の誇る伝統行事「大槌祭り」の日です。

* * *
9月18日のお祭りが近づくにつれ、地に足がつかない様子の子どもたち。それもそのはず。彼らの多くは、お祭りの担い手として練習に励んできました。

そうして迎えた当日。
秋の訪れを告げるような冷たい小雨が降りしきる中、力強い太鼓や笛の音が鳴り響きました。
それに合わせて町を練り歩く人々は、華やかな衣装で舞い踊ります。
行列の中には臨学舎に通う生徒の姿もありました。

虎舞

旗持ち

大槌祭り 笛

舞、旗持ち、太鼓、笛。

それぞれの役割を立派にこなす子どもたちの顔は真剣そのもの。

 

そんな表情を見ていると、大槌の子どもたちにとってお祭りが特別なものであることを実感させられます。
普段、臨学舎の教室で見せる姿とはまた違った生徒たちが見られるのも、お祭りの醍醐味です。

* * *

さて、臨学舎の職員・インターンは、今年も神輿の担ぎ手として参加させていただきました。
出陣
その中には、臨学舎を離れて活躍する「元」スタッフの姿も。

 

「自分にとって、大槌町は学びの場でした。今の自分の仕事の根底にある当事者意識、仲間へのコミット、情熱。沢山の学びをもらった大槌町は故郷のような場所です。だから1年に1度は戻ってきたくなります。今年もお世話になったみなさんに会いたくて戻ってきました」
そう語るのは、2014年の3月までインターンとして活躍し、現在は三重県で中学校教諭(数学)を務める長谷川真さんです。

一方、大槌で働いていた2012年当時は学生だった池上(いけのうえ)俊太郎さん。今は教育系民間企業に勤め、九州各地を飛び回る営業マンです。
臨学舎は「教育を志す原点」だといいます。
「祭りで毎年戻ってくるのは、離れてからも大槌に何かしたいという思いとともに、私自身が大槌からパワーをもらうためでもあります。臨学舎で毎回の指導に試行錯誤し、生徒一人ひとりについて語り合った経験は「何のために働くのか」の核となっています。しかし、日々の業務に忙殺される中でその思いが薄れてしまうことも。大槌へ帰り、懐かしい生徒、地域の方々、スタッフと再会することで、改めて原点に立ち返り、今の持ち場に全力で向き合う活力をもらっています」

集合

左から2番目が池上。右から金森、加賀、長谷川、池田(敬称略)。

つい最近まで、臨学舎を率いてきたスタッフもいます。加賀大資(だいすけ)さんです。

かがさん20139

2013年9月、授業での一幕。

「大槌は、自身の将来設計を良い意味で崩してくれた場所です。教育とは学校だけで行うものでなく、地域全体、みんなで行うもの。そして、その教育に携わる一人として、自分は何ができ、何のために生きていくのか。ここに来て、自身の教育観と人生観は大きく変わりました。今回も地域が一つになる祭りで、地域での教育の大切さと人とのつながりの中で生きることの心地よさを感じることができました」
4年間の大槌での生活を終え、この4月からは新天地、東京都・足立区で貧困世帯の学習支援事業に取り組んでいます。
「異動をし、新しい挑戦の中で迷うことや悩むことはありましたが、「原点」に帰ることで大切にしたいことを再確認することができました。自分にとって、ここ大槌町は原点に立ち返り、自分の軸を確かめることができる場所です」

 

2012年1月から臨学舎で働き、2014年7月から東京の拠点で活躍する金森俊一さんは、今年で4回目のお神輿担ぎ。

金森2012.10

2012年10月、吉里吉里中学校の生徒と。

「大槌町で働いている中で、町の皆がお祭りを大事にしていることを知りました。お祭りと言えば、出店で美味しい物を食べることしかイメージが無かった自分にとって、子どもから大人まで皆が主役となり、お祭りを盛り上げる雰囲気に感動したことを今でも覚えています。今回も、コラボ・スクール卒業生や、お世話になった地域の皆さんとの再会するために帰ってきました。誰かが待ってくれている場所があることは自分に取って本当に心の支えです。これからもこの縁を大切にしていきたいと思っています」

加賀さん、金森さんと同様、NPOカタリバの別拠点に活動の場を移したメンバーがもう一人。
大槌から遠く離れた島根県雲南市で、不登校児の支援に励む池田隆史(たかふみ)さんです。

いけたか

2013年9月、当時の中三生とテスト勉強に臨む。

「3年前、人生の再スタートの地が大槌町でした。厳しい環境の中、地域の人と全国から集まった人たちの、ひたむきに1人1人の子どもに向き合う姿に衝撃を受けました。忘れかけていた子どもの成長を思う気持ち、挑戦する勇気、そして人とのつながりが作り出す感動。今回のお祭りでも、地域の方やコラボの仲間から改めて教えてもらいました。大槌町は私にとって、教育において最も大切なことを心と体に蘇らせてくれる故郷です」

水の中

冷たい川の中でお神輿が躍動するころ、大槌祭りはクライマックスを迎えます。
同時に、お神輿を担ぐ人々にとっては、寒さと疲労感のピーク。
それでもお祭りを終えた後には、担ぎ手は不思議な達成感と感動に包まれるといいます。

 

* * *

 

「来年も、お祭りで」。

そう思うのは、私たち臨学舎スタッフだけではありません。
大槌祭りに合わせて里帰りする方も、たくさんいます。
臨学舎スタッフと同様、その方々にとっても、大槌町は「原点」なのでしょう。

町から飛び立った人々の「目印」として、これからも特別な存在であり続ける大槌祭り。
大槌町の伝統が大切に引き継がれていくことを願います。