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【大槌臨学舎】町の人×カタリ場!?

2017.2.15

高校受験まであと21日。

今年もたくさんの中学3年生たちが机に向かいながら、己との戦いを続けています。

先日、女川向学館で行われた「決起集会」と同じ頃、ここ臨学舎でも中学3年生が最後のガイダンスを迎え、受験での決意を新たにしていました。

実は同じ日、渦中の中学3年生と同じくらい・・・いえ、もしかしたら彼らを凌ぐほどの緊張感で、この日に挑んでくださった4名の方々がいらっしゃいました。

集まってくださったのは、PTA会長、教育委員会の職員、そして生徒の保護者という顔ぶれ。
普段接することの多い「身近な町の人たち」の話から、子どもたちにヒントを得て欲しい。
そんな思いから、カタリバ伝統の「カタリ場」スタイルで中学1・2年生向けのガイダンスを行うことになっていたのです。

町の方々には「先輩役」としてプレゼンテーションを用意していただきました。
その準備が始まったのは、ガイダンスの1ヶ月以上も前。
町の方々は年末年始の忙しい時期の合間を縫って、何度も何度も臨学舎に足を運んでくださいました。

そうしてできた、思いのつまったプレゼンテーション。
出番を控え、そわそわする大人たちをよそ目に、50名近くの中学1・2年生が集まりました。
「町の人カタリ場」のスタートです。

* * *

「いやなこと、面倒なことを体験するということ」というテーマで話してくださったのは、建設会社に勤める岩間公人さんです。

やんちゃな生徒から友達をかばったら標的にされた。
野球部ではえこひいきをする先輩に言い返したら干された。
設立されたばかりのハンドボール部に入り直し、厳しくも楽しい中学校生活を送った岩間さん。

中学生だった頃の岩間さんに、子どもたちも自然と自分の姿を重ね合わせます。

汽車通学が大変だった高校生の頃。
生まれて初めての一人暮らしを経験した大学生の頃。
最初は辛くてしょうがなかったけれど、だんだんと仕事が面白くなり、他の人が面倒がることにもどんどん挑戦した社会人生活。
大槌に戻ってきてから始めた現在のお仕事は、1からの修行で何度も失敗を重ねたといいます。

それでも、と岩間さんはこう続けました。

「それまでの失敗があったからこそ、コツコツやることで成長ができることを知っていたし、前の仕事でやってきた経験も生きた」と岩間さん。

嫌なことや面倒なことは、それぞれの年代・学年で常にやってくるが、それを経験することが、人をたくましくする。
親元を離れるまでに、厄介なことを経験し、経験値を積むことが大事。
面倒なことに向き合う気持ちを持って欲しい。

岩間さんからのメッセージを受け、ある中1の男子生徒は「面倒臭い、嫌だなと思うことを諦めずやりきりたい」と宣言。
「挫折しているところが自分と似ているけれど、それでも挑戦するっていうのはできていない。自分も勉強を諦めずにやりたい」という感想を述べる生徒もいました。

次に、教育委員会に勤める黒澤直美さん。臨学舎に通う生徒の親御さんでもあります。

剣道部に所属していた中学2年生の時に大会で優勝した時の経験を話しながら、そのときの感情をこう振り返りました。
「嬉しくなかった。負けたほうがよかった」・・・

実は、大会の準決勝で当たったのは、共に練習に励む部活の仲間でした。
決まり手のあたりが悪かったため、試合後に「ごめん」と謝ったところ、勝ったことを謝られたと捉えた相手に「ごめんねって言ってほしくない」と号泣されたそうです。

そのときに感じた「勝負って、なんのためにあるのだろう」という疑問から、黒澤さんの考え方は変わります。

勝負や比較だらけの学校生活。
誰かと比べないと自分の力がわからないのだろうか?
いや、自分の中で目標を決めれば、だれも傷つかない。
世の中は競争社会。でも、いつだって基準は自分。自分で立てた目標に向かっていく過程が大事。
黒澤さんが子どもたちに送ったのは、そんなメッセージでした。

「自分の人生をプロデュースするのは自分!」
黒澤さんの発表は、そんな言葉で締めくくられています。

「勝負って、なんのためにあるのだろう」という黒澤さんの言葉に反応しながらも「(それでも)勝負にはこだわりたい」というのは、部活動で忙しい中臨学舎に通う中1の男子生徒。
しかし一方で「自分を認める自分になりたい」という感想も書いています。
「自分の人生をプロデュースするのは自分!」という言葉が特に印象に残ったようです。

* * *

一生懸命に話をしてくださる町の人々に、たくさんの子どもたちが動かされました。

人間関係で悩んだ中学時代を振り返る岩間裕歌さんのプレゼンには、女子生徒から共感の嵐。
「キライな人がいてもいいんだ」という岩間さんの言葉に、子どもたちは安堵の表情を見せます。
一方で、キライな人からの言葉や態度も、その受け取り方によって仲良くなったり分かり合えるきっかけになることがあると岩間さん。
「自分次第で気持ちを楽にできるんだなと思いました」という感想も飛び出しました。

ある中2の女子は、岩間さんの話が深く心に刺さった様子。
友人のことで悩むことも多く、苦手な人には思わず表情が硬くなってしまうという彼女。
そんな自分を変えるべく、「苦手な人にも態度を変えない」と宣言しました。

中2のある男子は「気分屋」で、授業をサボることもしばしば。
話を聞かせるのも一苦労する彼が、じっと目を見ながら町の人々の話を聞く姿に、スタッフは驚きました。

いつもは感想を書いてもらっても、
「特になし」「わからない」と書く彼のワークシートを見ると、この日ばかりは感想がびっしり。

勉強が苦手だったという高木さんのお話を聞いて共感をした彼は、
「(苦手な)英語の勉強をしっかりやりたい」という目標も書いていました。
その宣言通り先日、受験2回目にして英検5級に見事合格・・・!
少し恥ずかしがりながらも、合格を報告してくれた彼。英語の授業でも姿勢が変わりました。

* * *

プレゼンターを務めてくださった町の人たちも、子どもたちと話すことで自分の「核」がわかった、と嬉しそう。

「くたくたです」「結構パワーが要りますね」「もう汗だくですよ」・・・
そんなことをつぶやきながら、子どもたちから書いてもらったメッセージカードを読む姿は、紛れもなく「かっこいい大人たち」でした。

この町に生まれ、この町とのつながりを持って生きてきた町の大人たち。
町外からやってきた私たちスタッフとは異なる刺激と発見を、子どもたちにもたらしてくれました。

町の人と中学生。新たなコラボレーションが、また生まれています。