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「私が背中を押してもらったように」被災地大槌で育った大学生が臨学舎に帰ってきた理由

2019.8.08

岩手県大槌町にて認定NPO法人カタリバが運営する、子どもたちの放課後の学びの場と居場所「コラボ・スクール 大槌臨学舎」。

ここでは、毎年少しずつメンバーが変わりながら、全国各地から様々な背景を持ったスタッフが集まって運営しています。

前回は、徳島県から2ヶ月間ボランティアとして参加している矢川さんの体験記を紹介しました。

今回紹介するのは、大槌臨学舎に通う子どもたちと同じように大槌町出身のスタッフである高木さん。中高生の時に大槌臨学舎に通っていた彼女は、現在大学を休学して大槌臨学舎のスタッフとして働いています。

左が矢川さん、右が今回紹介する高木さん。

 

そんな彼女に当時のこと、今のことを聞いてみました。

 

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■自身も通っていた大槌臨学舎でスタッフをしてみようと思ったきっかけは?

将来、大槌町や岩手県内で復興や大槌町の人のためになる仕事がしたいと思っていました。しかし、実際には客観的に地元の現状を知る機会が、大学生時代に多くありませんでした。

そのときに、大槌町に関わりを深める機会がほしいと思い、1年間休学をしてお世話になった大槌臨学舎でスタッフをしようと決めました。

 

大槌臨学舎では、生徒が「こんなことしてる人もいるんだ~」という発見や将来のヒントになる人に出会える場所であってほしいと思っています。

というのも、私自身が大槌臨学舎に通っていた当時、スタッフとの出会いから、様々な進路選択を考えることができたり、憧れの存在ができて目標をもって日々頑張ることができたりしたからです。

 

母校で自分の経験を話しました

私も、自分の経験を話すことで「大槌町出身の人もこんな経験してるんだ。私も頑張ってみよう!」と大槌町の子どもたちに感じてもらえるよう、日々の関わりを大切にしています。

 

 

 

■現在担当している授業を教えてください

 現在は「スカイプ英会話」という、ビデオ通話で講師の方と1対1で英会話を学ぶ授業の担任しています。実は、私自身が高校生の頃に大槌臨学舎でこの授業を受講していました。

当時の経験や、大学在学中に留学に行った経験を生かしたいと思っているのですが、生徒それぞれのニーズやレベルは異なっているので、一人ひとりのことを考えて授業内容の企画や時間の管理をすることはとても難しいと感じています。

そんなときは、周りのスタッフに積極的にアドバイスを求め、より良い授業になるように意識しています。

 

■当時、「スカイプ英会話」の授業でやっていたことは?

私は、スカイプ英会話を中学3年生から高校卒業まで受講していました。当時、受講を決めたのは特に海外の文化に興味があったわけではなく、“英語を話せたらなんかかっこいいから”という小さなきっかけでした。

その中で、大槌町に外国から訪れた方を対象に英語で大槌町内ツアーを行ったり、スピーチコンテストを実施したりしました。とても良い経験ができて、自分の進路にも繋がっていると思います。

 

英語を使って様々な文化の体験、挑戦する機会が増えました。

 

 

■大槌臨学舎は、自分にとってどんな場所だった?

高校生の時、所属していた高校の吹奏楽部のリーダーとしても多くの悩みを抱えていました。そんな自分を部員に見せたくない、親にも心配を掛けたくない…。

私は、堪えきれなくなってスカイプ英会話が始まる直前に、大槌臨学舎のスタッフに悩みを打ち明けました。涙が止まらず、授業を受けられなくなりました。そのスタッフは授業を中断し、私の話を最後まで聞き、心が落ち着くまでそばに寄り添ってくれていました。

そのとき、スタッフ自身が同じように大変な経験をしたときのことを話してくれて、自分もいつか乗り越えられるという気持ちにさせてくれ、勇気が出ました。

通っていた当時の様子。左が高木さん。

また、高校生3年生になって進路を考え始めた頃、なんとなく近いからという理由で、「岩手県内の大学に行く」と大槌臨学舎のスタッフに話していました。

あるスタッフは、そんな私に「安易だな~」と一言くれて、そのときは「なんでそんなことを言うんだ」と思いましたが、この言葉が「今、私は何をしたいのか?」と考えるきっかけになりました。

現在は、自分が中学生に寄り添います。

 

■自分も過ごした学び舎に戻ってみて、どのように感じている?

私自身、子どもたちと同じ大槌町出身で、震災後すぐに学習環境がすぐ確保されない、勉強道具もまともに揃わずに勉強ができないなど、大変な時期を経験しています。そのためか授業内容が頭に入ってこなかったり、集中ができなかったりという悩みを持つ子どもたちの気持ちが分かる部分があります。

自分の留学経験を話すイベントを企画。

 

子どもの気持ちを推し測ってから、話しかけるべき時は思いきって話しかけ、一人で考えている時は声を掛けず見守る、など私なりに考えながら動いています。

例えば、「分からないということを恥じる必要はない」ということや、「できる限り分かろうとすることはとても大切」など。当時の自分に声を掛けるとしたらどんな言葉をかけるだろうか?と考えながら接しています。

 

 

■今後やっていきたいことはなんですか?

自分自身もまだまだ勉強中なので、子どもたちの成長のサポートをしながら、一緒に一生懸命走りながら成長していきたいと思っています。

ここでスタッフとしていられる時間は長くはないのですが、生徒が自信を持てるよう、彼らの視野を広げる手助けをしていきたいです。

また、”卒業生が働いていることはとても価値のあることだ” という言葉をある方からいただいたことがあります。その言葉を胸に、大槌町出身、大槌臨学舎の卒業生として、生徒やスタッフと一緒に悩みながらも、自信を持つことを忘れず頑張りたいと思います。

 

 

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大槌町出身であることを誇りに思っている彼女。

その明るく前に進む姿が、現在大槌臨学舎に通う中高生に勇気と笑顔を与えています。

遠くから来たスタッフもいれば、近くのスタッフもいる。そんな様々な人がいるからこそ、子どもたちにたくさんの出会いを届けています。

彼女が大槌臨学舎で考えるきっかけを得たように、これからも子どもたちにとって身近な存在として関わっていきたいと思います。