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【被災地・熊本より】「益城町の今」を30秒ワンカットで!中学1年生が地震と向き合い、見つけたふるさとの良さ

2018.11.02

認定NPO法人カタリバが運営するコラボ・スクールましき夢創塾では、2016年4月に起きた熊本地震で大きな被害を受けた益城町にて子どもたちの心のケアと学習支援を続けています。活動の一環として、これまで職場体験などのキャリア教育で、中学校の総合的な学習の時間をお手伝いしてきました。

今回は、益城町内にある木山中学校の1年生91名を対象とした郷土学習をお手伝いをしました。2018年9月5日から10月2日までの間、週1回ペースで5回の授業を行いました。中学1年生が6人1班で、等身大で今の益城町を見つめ、30秒ワンカットで1つの作品を撮影しました。

ずばり、テーマは「益城町の今」。

授業の様子を実践型インターンシップの松本笑がレポートします。

初回の授業では、まずはタブレットに慣れてみる、ということをしました。

はじめは動画撮影の知識は特にありません。皆、たじたじ。

授業のお題は「木山中の好きなところを30秒ワンカットで!」というお題でした。

「好きなところ…?ないよ…」と困っている生徒が多くいました。座っていてはなかなか考えが進まない様子でしたが、動き出すとアイデアが湧いてきます。グラウンド、校門、渡り廊下、それぞれが思い思いの場所に走り出し、撮影が始まりました。

このプロジェクトには学校教員とカタリバ職員のみではなく、映像のプロや大学の先生も一緒につくりあげました。プロから撮影のコツを聞きながら、徐々に撮影にも慣れてきました。

いよいよ、本番のお題「益城町の今を、30秒ワンカットで!」というお題に取り組み始めました。

教室では「どこで撮る?」「誰がカメラマンやる?」「インタビュー形式?ドラマ仕立てで撮る?」など班ごとで相談。
中には、話合いが一筋縄ではいかず、揉めに揉める班も…。


生徒の振り返りシートには「協力するって難しい」と書いてありました。

話合いがうまくいかないという一見ネガティブな発見も生徒にとっては新たな学びです。

いざ、本番、外で撮影する日がやってきました!

あれほどに揉めていたのに、外に出ると役割分担もばっちり。「もっと声を大きくしないと入らないよ」など自分たちでお互いにアドバイスをし合っていました。

納得いくまで撮影を繰り返します。

ある班が撮影場所に選んだのは、「木山神宮」でした。地震で壊れてしまったお社を再建しています。

宮司さんに、地震直後から今までのお話を聞かせてもらいました。なかなか普段は聞けないお話に、生徒たちは真剣に話しを聞いていました。

全5回の授業の、最後の授業ではそれぞれの班で撮ったものを皆で鑑賞しました。

見終わるとお互いの作品に拍手を送り合っていました。
5週にわたる授業が終わり、「このプロジェクトの前は班で協力は難しかったけど、班で協力できるようになった」と振り返っている子が居ました。

「益城は何にもないもん!遊ぶところもなくて、つまらない!」最初の授業の中で一人の女の子が言っていた言葉です。授業が終わったとき、「この授業がなければ、自分の住んでいるところの良さに目をむけることはなかったです」と振返っていました。

最後の最後、例年10月に開催している文化活動発表会にて、全15作品を上映しました。

▼生徒が作成した15作品のうちの1つ。

他の学年の生徒や、保護者の方、地域の方が、見てくれました。保護者の方は「こうやって、地震があったことに向き合えるようになってきたのだな、と感じた」などの感想を語ってくれました。

益城町は2年半前に震度7を記録した大地震に襲われました。未だに工事が続いています。2年半が経っても元通りの生活を送れない方も大勢いらっしゃいます。その中、今回の郷土学習は改めて自分たちの住んでいる町を見つめなおす機会になったのではないでしょうか。後世に自分の町の良さを伝えていってくれることと思います。
将来、この町を巣立っていく生徒もいるでしょう。ただ、自分の生まれ育った町、「今の益城町」をふとした瞬間に思い出してほしいです。