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女川の町をめぐる中学生たちの挑戦~アートの楽しさを伝えよう!~

2019.4.23

宮城県女川町にてNPOカタリバが運営する、被災地の放課後学校コラボ・スクール女川向学館。今回は中学2年生が興味関心のあるテーマについて探究をしていく「探究授業」のうち、デザインアートチームの半年間の活動をお届けします。

「探究授業」とは、一昨年度より中学2年生を対象に実施している授業です。女川をフィールドにした3つのテーマのなかから自分の興味あるものを1つ選び、半年間をかけてそのテーマについて探究をしていきます。

デザインアートチームには、5名の子どもたちが集まりました。デザインやアートの創作活動を体験し、その機会やアートの楽しさを町に広めていくことを目的に活動します。

第一回目の授業は、マスキングテープ作家として活躍されるゲストをお招きしてのワークショップです。

色とりどりの柄やキャラクターの模様が入ったマスキングテープを手でちぎり、ポストカードに貼って作品を形作っていきます。

「中学生のころはテニスが好きで、テニスの選手になりたいと思っていたんだよ。」
「マスキングテープで作品を作り始めたら、町の人がすごく喜んでくれた。それがうれしくて、仕事のやりがいになっているよ。」

身近な場所で活躍するゲストの方のお話に、みんな興味津々。みんなも自由に作ってみよう!との声かけに、夢中になって作品作りに取り掛かりました。

次の授業では町の商店街へ繰り出し、スペインタイルづくりに挑戦!

商店街のお店の看板や家の表札など、町のいたるところで見かけるスペインタイル。

「震災で何もなくなってしまった町を、スペインタイルで彩りたいと思った。」

スペインを発祥としカラフルな彩が特徴的なスペインタイルに思いをよせる町の方の声に、じっくり耳を傾けます。

一人一人が自分でタイルに描く絵柄を選び、タイルに枠取り、スポイトで絵の具を落とす繊細な作業に挑戦しました。

スペインタイルづくりの技術だけでなく、震災や町への思いについても知ることができました。


さて、ここからはどんどん自分たちで表現することにもチャレンジです!一つ目のチャレンジは、向学館に通う小学生の子どもたちへ向けた教室の掲示板の飾りつけです。

「どんなキャラクターが好きかな?動物かな?」
「みんなの写真も入れたら、きっと楽しいよね!」

みんなで話し合いながら、得意分野に合わせて役割分担をします。絵を描く子、色を塗る子、飾りつけのバランスを考えて配置する子。それぞれが小学生たちの喜ぶ姿を想像しながら、協力して飾りつけを完成させました。

小学生たちに飾り付けた掲示板をお披露目した日。
「かわいい!私の好きなキャラクターがある!」
「僕が写っている写真があるよ!見て見て!」

小学生たちは驚きと嬉しさで、口々に喜びの声をあげていました。
普段使っている教室が華やかになり、向学館のスタッフにも大好評!

チャレンジの二つ目は、3月末に行われる震災後に始まった女川のお祭り「復幸祭」の出店で飾る看板づくり!女川出身でグラフティアーティストとして活躍されている方をゲストに迎え、スプレーアートに挑戦しました。

「小さいころ、一緒に遊んでくれてましたよね!」と子どもたちから声がかかるほど、町のなかの身近な存在であったゲスト。女川やアートへの思いを熱く語り、真剣に作品作りに向かう姿は、子どもたちにも強く印象に残ったようです。

看板づくりでは、両手を広げたほどの大きさのキャンバスに店名からイメージした柄をスプレーで描いてみます。

強く吹きすぎないように、文字がきちんと浮かび上がるように、ゲストの手元をよく観察しながら、それぞれの個性が出る看板が完成しました。

そして、三つ目のチャレンジは、町のお祭り「復幸祭」での子ども向けアートワークショップの開催。いままで様々な町の人に教えてもらったアートの楽しさを、お祭りに来た子どもたちと一緒に大きなキャンバスに絵を描き上げることで伝えます。

 

内容や準備物、役割分担など中学生の子どもたち自身で考えました。

町の方々にご協力をいただいて、復幸祭当日をイメージしてのワークショップ練習会も実施。


「みんなの名前がわかるように、スタッフ用の名札があるといいね。」
「子どもたちと同じ目線に立って、簡単な言葉で言い換えるといいよ。」
「みんなの作品すごく上手!お手本として子どもたちに見せてあげるとよさそうだね。」

町のみなさんから、たくさんのあたたかいアドバイスをいただきました。

そして、いよいよ本番。「復幸祭」当日です!
手作りのチラシをもって子どもたちに呼びかけたり、参加した子どもたちの好きな絵を一緒に描いてあげたり。一人ひとりが子どもの目線に立って、一生懸命に取り組みました。


「すごい!お姉さん絵が上手!私にも描いて!」
「とっても楽しかったー!」

参加した子どもたちの喜ぶ姿に、中学生たちも嬉しそうな表情。町の皆さんから教わったアートの楽しさを、お祭りに来た子どもたちにも伝えられたようです!

半年間をかけて、たくさんの方々の思いに触れながらアートを楽しむことができました。また、その楽しさを誰かに伝えるというチャレンジを通して、多くの学びや達成感を得ることができたようです。

4月からは中学3年生。今年度もみんなで、がんばっぺし!