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大槌の高校生が女川の仲間たちと共に結ぶ、15歳の自分との「やくそく」

2019.5.24

 

 

岩手県大槌町にて認定NPO法人カタリバが運営する、子どもたちの放課後の学びの場と居場所「コラボ・スクール 大槌臨学舎」。

4月のある日、真新しい制服に身を包んだ高校1年生たちが、久しぶりに臨学舎にやってきました!

 

この日に集まったのは、およそ1ヶ月前のある合宿に参加した高校生たち。

ある合宿とは、「やくそく旅行」という当時中学3年生の彼らが参加した旅行です。

 

 

■高校生活で「自分が大切にしたいこと」を見つける3日間

 

この旅行の目的は、高校入学を控えた彼らが、高校生活に向けて自分が「大切にしたいこと」を、仲間と語り合いながら見つけること。

 

 

 

普段、馴染みの仲間や大人がいる環境で過ごしている子どもたち。

そんなコラボ・スクールに通う岩手県大槌町、宮城県女川町の中学3年生が、町を飛び出し、3日間を通して寄付をいただいている企業の方々やユニークな活動する高校生に出会い、自分が「大切にしたいこと」のヒントを探しました。

 

 

 

■かっこいい大人に出会う1日目

 

旅行初日。

東北よりも暖かい東京に着き、慣れない移動に不安を抱きつつ、多くの生徒がこれから始まることにワクワクしている様子。

 

そんな中、合宿がスタート。はじめにグループごとに異なる企業を訪問し、前もって考えてきた質問をもとに、企業のことや社員の方の学生時代の話などを聞きました。

 

 

企業訪問から戻り、グループごとに聞いてきた内容や自分の感想を共有。

互いの感想や考えに耳を傾ける子どもたちは、「なるほど!」「それは私も思った!」など、自分だけでは気に留めなかった気づきを知ったり、共感をしたりしている様子。

 

 

 

 

グループで共有した後は、どんな仕事をしているのか、会社や話を聞いた人に対してどんな印象を抱いたのかを、「〇〇さんは、こんなひとだ!」という一文にまとめました。

 

 

 

 

「Nさんは、今を大切にして前向きに取り組んでいる、かっこいい人。」

「Tさんは、周りの人と協力しながら、自分のやりたいことに向かってチャレンジし続ける人」

 

それぞれのグループごとに話し合い、仕事をするときに大切にしていること、そう思うようになった原点やきっかけをもとに編み出しました。

 

 

 

1日目から学びの多い刺激的な話を聞いて疲れた様子の子どもたちでしたが、

「企業訪問は緊張したが、Tさんの話を聞いたらそれをもとに自分の意見を言えるようになった。」

「最初は緊張していたが、グループで話すことに安心できた。話せてよかった。」

と、充実した感想を述べました。

 

 

■自分の想いを語る高校生の姿を見てみよう

 

2日目は、高校生たちが自分の興味関心ごとの活動を発表しあうマイプロジェクトアワードを見学。

 

会場は、全国各地から集まった熱意あふれる発表をする高校生で溢れていました。

中学生たちは、その姿に圧倒されながら、自分の活動内容や想いを語る高校生の姿に「共感した」「憧れた」「よくわからないが惹きつけられた」というような多様な軸で、見入っていました。

 

 

 

地元の大槌町で神楽をやっているNさんは、同じように郷土芸能の神楽をやっている高校生の発表をとても興味深く聞いていました。

発表後、Nさんは高校生のところに駆け寄り、「自分も地元で神楽をやっているんだ!」と高校生と互いの地域の神楽について興奮気味に話していました。

 

 

■自分の「大切にしたいこと」を考えよう!

 

1日目に社会人、2日目に高校生と、それぞれの「大切していること」を聞いてきた子どもたち。

いよいよここからは、自分自身が高校生活で「大切にしたいこと」を見つける時間。

 

これまでの中学生の自分、幼い頃の自分の原体験や、この2日間で見聞きしたことを振り返りながら、高校生活で「大切にしたいこと」を考えていきました。

 

 

 

 

■自分の「大切にしたいこと」を伝える

 

時間いっぱい考え抜いた子どもたちには、

翌日、自分の言葉で考えた「大切にしたいこと」を約束する機会が設けられていました。

発表直前にはお互いに発表練習をし、応援メッセージを送りあいました。

 

 

そして本番。

初対面の人がたくさんいる場所で、緊張している様子の子どもたち。

スケッチブックに自分の「大切にしたいこと」をまとめ、それを使って発表します。

 

 

 

人を助ける仕事に就きたいと言っていたSくんは、

「『人の人生を考えることが大事なんだよ。』という話を聞きました。僕は友達が好きで、大事にしたい。今回女川と大槌の中学生で話して仲良くなって、人と人がつながるのがいいなと思いました。」

 

 

 

また、企業訪問で社員の人がざっくばらんに話している様子が印象に残っていたYくん。そのエピソードから語り始めました。

「年齢や立場の差を気にせず、リラックスして自分の意見を言っていました。

その姿を見て、僕も自分の意見を言えるようになりたいし、相手が意見を言いやすい環境を作れる人になりたいと思いました。まずは部活で先輩・後輩関係なく意見を言っていきたいです。」

 

 

自分の想いをじっくり語った子どもたちは、清々しく、やりきった表情をしていました。

 

 

 

■1ヶ月後に、共に学んだ仲間との再会

 

それから1ヶ月後、濃い3日間を共に過ごした仲間が、ビデオ通話で再び顔を合わせました。

 

 

 

「部活は何に入った?」

「学校で好きな時間は?」

 

高校生活が始まり、新しい環境でいろいろな変化がある中、すっかり仲良くなっている子どもたち。

お互いに質問しあいながら近況を話し、旅行の時の約束をもとにどう過ごしているのかを伝え合います。

期待と不安が入り混じりながらも、自分の「大切にしたいこと」を胸に、楽しく高校生活をスタートさせたようです。

 

 

今回、「大切にしたいこと」を考える時間と出会いが、彼らの高校生活を過ごす後押しになれるようにと開催された、「やくそく旅行」。

幼少期に震災を経験し、自分の好きなもの、やりたいことを見つけるきっかけ、そして「やりたい!」と言える機会が少なかったかもしれません。

そんな彼らが大人になっていくときに、自分の興味や意欲を伝えられる人になってほしい。震災から時間が経ったとしても、コラボ・スクールのスタッフは、被災地の子どもたちが自分の足で人生を歩いていけるように活動を続けています。

 

新年度になって、コラボ・スクールは新しい子どもたちも迎え、これからも毎日子どもたちに学びを届けていきます。