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「コロナのせいで諦める1年にしてほしくない」~元国語教員佐藤敏郎先生が女川の子どもに届けた「言葉の授業」~

2020.6.10

2月27日、学校が全国一斉に休校してから3ヶ月が経ちました。

この3ヶ月間、女川向学館では子どもたちの学びを止めないためにオンラインで授業を行っていました。

女川向学館 オンライン授業の様子

 

オンラインの授業は、数学や英語の教科学習だけではなく特別授業もあり、元女川第一中学校の国語教員、佐藤敏郎先生に「言葉の授業」の講師をお願いしました。

敏郎先生は過去に、東日本大震災で被災した子どもたちに俳句の授業を行っていました。

今回のブログでは、「言葉の授業」にかけた思いや敏郎先生が感じた子どもたちの様子などを伺いました。

【被災地の教育現場 vol.18】 すべては五七五の中にⅠ 

【被災地の教育現場 vol.19】 すべては五七五の中にⅡ 

 

▲ある中学3年生の女の子が書いた「今の気持ち」

 

「言葉の授業」はいろいろなテーマが設定されました。

上の写真は「20文字で今思っていることを書いてみよう」というテーマに取組んだときのものです。

 

■今回、子どもたちにどうなってほしいと思い、授業を行いましたか?

  言葉は情報や思いを誰かに伝える手段であると同時に、考えや気持ちを整理するものでもあります。20字ですから「暇だ」「つまらない」あるいは「頑張る」といった一言ではなく、もう少しだけ視野を広げ、思いを深めることになります。それがねらいです。子供たちは、20字という制限の中、一字一句吟味して、自分の気持ちにピッタリの言葉を探していたようです。

 

■子どもたちはどんな様子で授業を受けていましたか?

 ほとんどの子は「コロナ」に関連した今の思いを書いていました。

「自分の気持ち」の次は「自分以外の人、モノの気持ち」を書かせました。先生や親、あるいは桜の木とか学校とかコロナとか。たとえば桜の木は「せっかくきれいに咲いたのに見物が少なかった。」といった感じ。

短い文です。「説明しなくていいぞ、読む人に想像してもらおう。想像したくなるような文にしよう。」と助言しました。けっこう黙々と書いていました。

▲小学5年生の「言葉の授業」の様子

 

■子どもたちからでてきた言葉で、印象的なものはありましたか?

  ずっと家にいる状態を「本をずっと読んでいる」「ゲームばかりしている」「曜日を忘れる」みたいに工夫して表現してくれました。「部活やりたい」という中学生がいました。心からの叫びですね。彼にとっては一言でいいかもしれません。

 自分以外の気持ちでは「コロナの気持ち」を書いた子が多くいましたね。「ハッハッハッハッ、人間どもを苦しめてやる」的なのが多かったんですが、「〇〇に気づいてほしい」というコロナの願いを書いた子もいました。

 

■子どもたちからでてきた言葉を通して、子どもたちはどんなことを感じていたと思いますか?

  誰もが未体験の日々で、大人だって先が見通せない状況が続いています。そんな中で、思いを言葉にして発表し合うことで「自分一人じゃない」と感じるもの。「そんな考えもあるのか」という気づきもあります。「直接会えないけど、オンラインでもこうやって会えることが分かった」とつぶやいた子がいました。「孤立しないこと」「他を認め合うこと」はオンラインでも教室でも大切にしたいことです。

▲授業を行う敏郎先生

 

■子どもたちの様子をみていて、震災当時を思い出すことはありますか?

 あの時女川は他地域より早く、例年通りの日程で学校を再開しました。とにかく丘の上の学校に子供たちを集めたかったのです。そこに彼らは毎日、避難所から着の身着のままで通ってきました。しょっちゅう集会や合唱をしていたし、炊き出しがあってワイワイ食べて、みんなで集まることが、困難に向かうエネルギーにもなったような気がします。

 でも、今回はそれができない。ホントはみんなで集まり、スクラム組んで頑張ろう!ってやりたいところですよね。

 「三密」を避けた学校生活は子どもも先生も大変です。社会全体でサポートが絶対必要だと思います。

 

■まだコロナ禍は続いていきますが、子どもたちはどうなると想像しますか?それによってでてくる言葉は、どんなものがあると思いますか?

  休校は約3ヶ月続きました。学年のまとめの3月と新学期の3ヶ月です。今後も含めて、行事や活動が例年通りできないことの影響は当然あると思います。中総体も中止になったし。

 いつか2020年を振り返ったとき、コロナのせいで「できなかった」「あきらめた」だけの年ではなく、「大変だったけど〇〇ができた」という言葉で語らせたいなと思っています。

 

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休校によるストレスと不安を抱えながらも、子どもたちは新しい日常を受け止めようとしています。

緊急事態宣言が解除され、6月8日から女川向学館も対面の授業に戻りました。

「大変だったけど〇〇できた」と子どもたちが語れるように、向学館では、子どもたちの学習と日常の両面から伴走していきたいと思います。

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