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【臨学舎卒業式】志望校合格のその先に

2017.3.30

ここ、大槌臨学舎では、今年も35名の中学三年生全員が第一志望校に合格しました。
今年の中学三年生は、例年に比べてマイペース。
自習時間もなかなか伸びず、言葉をかけても動き出さない。
それでも、受験という試練を経てだんだんと変わっていきました。

この日は、臨学舎最後のイベントとなる卒業式。

臨学舎に通う三年生のほとんどが、足を運んでくれました。

卒業、そして志望校合格という一旦の「ゴール」にたどり着いた子どもたち。
ほっと一息つきながらも、彼らにちょっと先のことを考えてみてほしい。
そんな思いから、私たちが用意したのは「カタリ場」でした。

普段、日常の居場所を作っている私たちだからこそ、非日常さが特徴のカタリ場を作り出すのは一苦労でした。
まだ来たばかりの職員、そしてこの3月で1年の活動を終えるインターンスタッフに加え、ボランティアの大学生2名にも協力をお願いし、子どもたちが知らない私たちを語るべく、日夜準備を重ねました。

* * *

そして迎えた当日。
お祝いの言葉を聞き終えた生徒たちは、早速スタッフたちによるカタリ場へ。

まずは班にわかれて、班の先輩であるスタッフと一緒に、自分のこと・学校生活のことを振り返ります。

「自分のいいところってどんなところ?」
そんな質問に対し、班のスタッフが思わず「笑顔でしょ」とツッコミを入れたのは、いつも笑顔のAさんです。

しかし、Aさんはその言葉に首をかしげました。
聞けば、いつも笑顔であることはむしろ「自分の好きじゃないところ」なのだと言います。

なぜ笑顔でいるのか・・・?
その答えは「楽だから」でした。
家でも、学校でも、笑顔でいれば「面倒くさいことにならない」。
そう考えた彼女は、受験中の辛い時でさえ、笑顔を心がけたのだといいます。
しかし、そうしていくうちに彼女はどんどんわからなくなっていたのです。

「どれが本当の自分の感情なんだろう・・」

そんな彼女は「本音を言えないあなたへ」と題された先輩の話を聞くことにしました。
この1年間臨学舎で活動をしてきた、大学生インターンである上田さんの話です。

上田さんもまた、この場にかける思いがありました。
今回が、三年生に向き合う最後の場。すべてを包み隠さず、思いを伝え切ろう。と・・・

上田さんが話すのは、優等生を演じていた昔の自分と、それを打破するまでの葛藤のストーリー。
話しているうちに必ず、後悔や恥ずかしさ、当時の苦しみがこみ上げてくるはず。だからこそ、本当は話したくなかったと言います。

それに、「本音を言おう」とか「いい子を演じなくていいよ」というメッセージはありきたりだ。
そんな風に上田さんは考えたそうです。

「1年間一緒に過ごして、ずっと見守ってきた生徒たちに、最後にどんなメッセージを伝えればいいんだろう?
考えれば考えるほど、分からなくなりました。
最後にたどり着いた答えは、「ただ『先輩』として何か教訓を教えるのでなく、1年間『先生』と呼ばれて過ごしてきた私の等身大の姿や、苦しみを伝えようということです」

秋のガイダンスで、三年生の生徒と。

今まで、生徒の前で弱みは見せずに過ごしてきた上田さん。

それでも、いつもうまくいっていたわけじゃないし「本音を言えない自分」を完全に乗り越えたわけでもない。

今でも「みんなの前でいい顔してしまう自分」「いい先生であろうとする自分」がいて、とても嫌だし、その現実に毎日苦しんでいる。

そんなリアルな自分の姿を、上田さんは伝えようと考えたのです。

「私は立派な『先生』なんかじゃなくて、ただの大学生で、今でも変わりたくて苦しんでいるんだって。生徒の前で言うことには勇気が要りました。今までずっと『先生、先生』と話しかけてきてくれた生徒たちがすぐ目の前にいたので。なんて思われるか、ものすごくドキドキしましたが・・・目の前には、ただただまっすぐに私の目を見て、話を聞いている生徒がいました」

 

この子たちなら、伝えても、きっと大丈夫だー

そんな気持ちを込めて言葉を紡ぐ上田さん。そんな上田さんの話を聞く生徒の目に、涙が。
あの、Aさんでした。

「いい子を演じなくても、見てくれる人は絶対にいるから!」

自身も涙を流しながら語る上田さんの、力強い心からの言葉がAさんの胸に突き刺さりました。

班に戻ったAさんは、班の先輩にこう伝えました。

いきなり、笑顔をやめることは難しい。
でも、時には笑顔を忘れてみてもいいのかもしれない。
まだ、怖いけど・・・

Aさんの表情からは、いつも通りの「笑顔」が消えていました。

* * *

3年間の思い出がつまったプレゼントムービーの披露も終わり、卒業式はいよいよクライマックスへ。

最後の場はみんなで車座を作り、生徒・スタッフが思いを伝える場となりました。

「受験は辛かったけれど、負けずにやりきってよかった」。
「ずっとみんなが合格するか不安でたまらなかったけれども、本当に嬉しい。がんばったね」。

ぽつり、ぽつりと手が挙がり、素直な思いを伝えていく中で、周りをキョロキョロと見回すRくん。
特別自習室での厳しいラストスパートを乗越えた一人です。

少しやんちゃな彼は、まじめな雰囲気がちょっぴり苦手。
これまでは、真剣な仲間を茶化してみたり、わざとふざけてみたり。
そんな彼が、この日ばかりはそわそわ・・・

彼の周りにいる仲の良い友だちは、手をあげる勇気がなく、うつむいたままです。

一人、また一人と手を挙げ・・・そして訪れた、沈黙。

終わりの時間が迫る中で、彼は「仕方ないな・・・」と照れ隠しでつぶやきながら、手を挙げてみせました。

「先生たちのこと、嫌いだった。勉強をしたくない日も話しかけてきて、勉強しなきゃならなかった」
それまでにない、厳しい言葉に会場がどよめきます。
一呼吸置いて、彼は続けました。
「でも、受験が終わってから、コラボがなかったら俺、合格できなかったんだろうなって思って。だからコラボに来てよかった。先生たち、ありがとうございました」
最後は少し恥ずかしそうな表情を浮かべつつも、仲間の力を借りることなく、たった一人でホンネを話してくれました。

そんな彼に続くように、仲間たちも思いを告げ・・・この場は幕を閉じました。

* * *

続く懇親会で、三年生たちは臨学舎の後輩たちへ、言葉を残しました。

Go ahead through the way which you believed in!

そんな言葉を書いたSくん。
彼自身が、受験の応援メッセージで母親からもらった言葉です。
4月からは遠く、盛岡での寮生活が始まります。

親元を離れ、遠くの地での生活を選んだ生徒。
隣の町から、大槌に通うことを決めた生徒もいます。

いつでも、どこにいても、どんな人になろうとも、臨学舎には帰ってこられる。

そんな場所にして、みんなを待っているよ!