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【被災地・熊本より】震災から7年の東北で「本当の復興とは何か?」を学んだ3日間

2018.1.25

熊本県益城町から井下がレポートします。

2018年1月4日(木)・5日(金)・6日(土)の3日間で、熊本地震を経験した益城町の高校生が、東日本大震災で被災した宮城県女川町と石巻市で学ぶ「東北スタディツアー」を実施しました。また、その報告会を1月21日(日)に実施しました。

ツアーに先立ち行った、事前ミーティングの様子はコチラ。高校生たちが東北の3日間で学ぶための問いを、自らで考える時間を作りました。

その際、課題感を出し合いテーマとして挙がったのが、「本当の復興とは何か?」「私たちにできることは何か?」というものでした。そのテーマを胸に、東北へと向かいました。

益城町から8時間ほどの移動を経て、ようやく到着した女川駅。女川出身の高校生が2名、私たちのことを出迎えてくれました。

この高校生は、ちょうど1年前に益城町を訪れた2人(当時の様子はコチラ)。その際に、益城町を益城の高校生が案内してくれた経験から、「自分も女川を案内したい」という気持ちを温めてくれていて、ようやく実現した機会となりました。

▲駅前のきれいな街並みに驚く益城町の高校生。写真右手の2名が女川の高校生。女川向学館に通っている高校生でもあります。

▲まずは町全体の様子を案内してくれました。最初に訪れたのは、女川町地域医療センター。高台にあったので、避難してきた方が多かったそうですが、1階の高さまで津波が襲いました。

▲医療センターすぐ横の、おちゃっこクラブにもお邪魔しました。名物の、ほや塩ソフトをいただきました。店主の方から、「なぜソフトクリームなのか」「なぜこの場所で店を開いているのか」などの話をうかがいました。

▲駅前に戻り、三陸石鹸工房KURIYAにもお邪魔しました。三陸の素材を活かした石鹸を製造・販売されています。

▲案内してくれた女川の高校生のご実家でもある衣類・雑貨店のMARUSAN。ウエットスーツ素材を加工して作ったオリジナル雑貨などを楽しみました。

▲ひと通り町を見学した後に、高校生たちで語り合いました。

「町を見て、感じたこと」
「震災を受けて自分が感じていること」
「今自分なりにチャレンジしていること」
「感じている違和感」など。

初対面がほとんどではありましたが、同世代同士ざっくばらんな本音の話をしていました。

▲その後、おかせいの女川丼をいただきました。海鮮好きな高校生が集まっていたようで、大変喜んでいただいていました。

2日目は、朝から石巻市の大川小学校を見学しました。

▲案内してくださったのは、佐藤敏郎先生(敏郎先生のインタビューはコチラ)。

「あの日、この場所で何が起こったのか」
「その時、敏郎先生はどんな気持ちだったのか」
「関係している方々はそれぞれどのような気持ちでいらっしゃるのか」。

▲場所を移しながら、想像を膨らませながら、敏郎先生のお話を伺い、高校生の表情が変化していく様子がありました。

▲お昼ご飯を頂き、温かい場所で敏郎先生と語り合う時間がありました。

「なぜ多くの命を救えなかったのか」。

ある高校生は組織の課題に着目し、ある高校生は意識の課題に着目しました。

 

▲夕方は、女川向学館にて「女川の19歳×益城の高校生 カタリ場」を実施しました。震災当時小学6年生だった女川の19歳(以下、「先輩」)2名にご協力いただきました。

まずは、益城町の高校生にとっての熊本地震後の1年半を振り返り、語り合いました。

▲その後、震災からの7年間、女川で先輩たちがそれぞれどのように生きてきたかを語ってもらいました。

「津波の直後はどんな気持ちだったか」
「みんなと同じ高校生の頃どんな風に過ごしていたか」
「今どんな気持ちで日々を過ごしているのか」。

▲益城の高校生からは「自分の境遇と似ている気がした」「とても、言葉が胸に響いた」などの感想がありました。少し年上の先輩からの、等身大の本音の言葉に、共感や新たな気付きを得た様子でした。

東北から帰熊後、新学期・テスト期間を経て、1月21日(日)に益城町で東北ツアーの報告会を行いました。

▲県外からの方も含め30名強の観覧者に緊張の面持ちの高校生6名。2週間かけて、自分の思いを形にしてきました。

前半3名は「本当の復興とは何か?」、後半3名は「私たちにできることは何か?」というテーマで、感じたことを語りました。

▲小学校教員志望の高校生。大川小学校での出来事から、自分自身が強く感じた疑問点を提示。「将来は、子供たちの命を守る判断ができる教師になりたい」と決意を述べました。

▲女川と益城の違いに着目した高校生。女川で感じた益城の違和感を、飾らずに言葉にしました。

▲東北の方から生き方を学びたいと参加した高校生。被災者のモチベーションの在り方について考えたこと。女川の復興ぶりや、女川の人たちの町のために何かしたいという姿をうらやましく思い、益城町の在り方についても改めて考えさせられたと語りました。

▲高校生の発表に真剣に耳を傾けてくれた観覧者の方々。それぞれから、高校生一人ひとりにメッセージカードを書いていただきました。

▲後半は、「私たちにできることは何か」というテーマでした。女川のソフトクリーム屋さんが大事にしていることを聞き、リラックスして集まれる場所を益城にも作っていきたいと語りました。

▲地震直後は避難所でボランティアをしていたが、今は何もできていないという焦りを感じていた高校生。女川の高校生や先輩方との交流で、心が和らいで前向きになれた話をしてくれました。

▲ソフトクリーム屋さんでの「語ることで自分の心がゆらぐ。これが復興だ」という女川の方の話が一番心に響いた高校生。「自分も、女川で感じた心のゆらぎを、どう周囲の人に語っていくかを考えていきたい」と語りました。

▲熊本大学の江川良裕先生より総評をいただきました。それぞれが感じた違和感や、それを伝えていくことについて意味付けをしてくださりました。

▲観覧者の方が書いたメッセージカードを渡す際、高校生と語り合う姿が印象的でした。大人にとっても、溢れるものがある場になったようです。事後アンケートからは「みんなが学び合える場になった」とのコメントもいただきました。

▲「日々のことに流されながら、忘れてしまっていることを思い出させてもらった気がします」
「心の中に、あたたかく、勇気をもらいました」
「この場だけではもったいない。この体験報告をもっとたくさんの方、同世代に聞いてほしい」

などの感想を観覧者の方からいただきました。

▲報告会終了後の、高校生の達成感と、井下の疲労感。準備期間を含めてこの1か月間で、高校生の表情がみるみる変化していく様子を見ました。

私自身、益城の高校生が東北で何をすればいいのだろう…と考えても分からず、困ったところから始まったこの企画でした。

全体の問い・テーマを高校生にゆだねたことで、彼らが学びたいことを学び、伝えたいことを伝えられる場になった気がしています。

これからも、彼らの意思に寄り添っていきたいと改めて感じました。